新井吾朗 職業能力開発研究室

職業能力形成をめざす一人ひとりの努力が報われる環境の構築をめざして

大学

実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化 審議経過報告書

20160629

中央教育審議会で、新たな高等教育機関の制度かに関する答申が出されていました。
職業訓練の側からは、いよいよ、黒船来航というところでしょうか。

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個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による
課題解決社会を実現するための教育の多様化と
質保証の在り方について(答申)(中教審第193号)

平成28年5月30日
中央教育審議会

中央教育審議会では、平成28年5月30日の第107回総会において、「個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について(答申)」を取りまとめました。

実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会の審議経過報告が公表されました。

「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い専門職業人養成のための新たな高等教育機関の制度化について(審議経過報告)」
平成28年3月30日
中央教育審議会実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会

以下のURL:から全文をダウンロードできます。
 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo13/sonota/1369052.htm

 以下のような教育機関だそうです。

 《身に付けさせるべき資質・能力》
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ア)専門とする特定の職業、一定の産業・職業分野に関して身につけさせる能力
 ❶ 専門とする特定の職業(職種)に関し、高度な専門的知識等を与え、理解を深化【専門高度化】
  ◆ 特定の職業における高度で専門的な知識理解等
  (例) 当該職業に関する理論への深い理解、分析的・批判的能力 など
 ❷ 専門とする特定の職業(職種)に関し、卓越した技能等を育成するとともに、実践的な対応力を強化【実践力強化】
  ◆ 特定の職業における卓越した技能等と実践的な対応力
  (例) 生産・サービスの現場で培う高度な技能 など
 ❸ 一定の産業・職業分野(例えば、情報分野、保健分野など)に関し、当該分野全般の、又はその関連の基礎知識・技能等を育成【分野全般の精通等】
  ◆ 当該職業分野全般の知識・技能等
  (例) 当該分野内における各職種等全般の基礎的な理論、共通的な技能等
    開業等に際して必要となる他分野(簿記・会計、経営など)の基礎知識・技能等 など
 ❹ 職業に関する実践的な技能や、実践知と理論知、教養等を統合し、それらの活用により、現実の複雑な課題の解決や、新たな手法等の創造に結びつけることのできる総合的な能力を育成【総合力強化】
  ◆ 理論と実践を結びつける総合的な能力
  (例) 高度かつ実践的な課題発見・解決能力、新たな付加価値や商品・サービス、生産手法等の創出・改善を推し進める創造的な能力 など
イ)職業人として共通に身につけさせる能力
 ❺ 職業人として共通に求められる基礎的・汎用的能力や教養、主体的なキャリア形成を図るために必要な能力を育成【自立した職業人のための「学士力」育成】
  ◆ 職業人の基礎的・汎用的能力等
  (例) コミュニケーション能力・ディベート力、課題対応能力、チームワークやリーダーシップを発揮して責任を担う能力、多様性への理解、職業観など
  ◆ 主体的なキャリア形成を図るために必要な能力
  (例) 生涯にわたり学び続けるための基礎・教養(学習スキル等)、キャリアアップ等の基盤となるリテラシー(外国語、ICT等)、キャリアデザイン力など
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《制度設計に当たり重視すべき視点》
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 ❶理論と実践の架橋による職業教育の充実
 ・ 理論への理解の深化と実践的な技能の強化を両輪とした教育を行い、知識と技能を結びつけ、真の課題解決能力、創造力を発揮できる人材を養成する。
 ❷産業界・地域等のニーズの適切な反映、産業界・地域等との連携による教育の推進
 ・ 産業界・地域等との対話・協力を積極的に推進する。各職業で必要とされる能力や地域等の人材需要を明確化しつつ、これを育成する教育課程を編成し、相互の連携により、当該課程の実施・改善を図る。
 ❸社会人の学び直し等、多様な学習ニーズへの対応
 ・ 多様な学習スタイルを可能とする柔軟な制度設計により、多忙な社会人等にもアクセスしやすい学修機会を整備するなど、一人一人の学習者のニーズに適切に対応する。
 ❹高等教育機関としての質保証と国際的な通用性の担保、実践的な職業教育に相応しい教育条件の整備ふ さ わ
 ・ 国際通用性のある高等教育機関として求められる質の担保を図りつつ、実践的な職業教育に相応しい教育条件の基準や、質保証の仕組み等を整備する。
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本報告に関連するトピック
高等教育と職業訓練の新たな関係
大学教育と職業訓練の学習時間

企業内学校 まとめページ

知り合いに教えてもらった企業内学校のまとめページ。

もちろん職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練校は認識していたのだけれど、それ以外に企業がいろいろな形で学校を作ったり、支援してることが分かります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%81%E6%A5%AD%E5%86%85%E5%AD%A6%E6%A0%A1





 

大学教育と職業訓練の学習時間

職業能力開発研究誌に、以下のテーマの論文が掲載されました。

大学教育と職業訓練の学習時間に関する考察
-学習時間・到達目標・指導項目数・授業方略を考慮した比較-

 
職業能力開発研究誌 第30巻
2014年3月

 
近年高等教育レベルの職業訓練の学位認定や大学教育との間での単位互換などが議論されている。
 大学教育では、学習のまとまりを単位で表現しているが、職業訓練では法律上は時間数で、慣用的に単位を利用している場合がある。この場合、大学の単位と職業訓練の単位は、そこで行う教育内容は異なるので、換算の考え方が必要になる。本報告ではそうした単位換算の基礎を、時間数だけでなく、学習内容、指導方法を考慮して整理した。
プロフィール

職業能力開発総合大学校
能力開発応用系 准教授
博士(教育) 新井吾朗

職業訓練指導員養成課程で職業力開発技術の普及を担当しています。
また、職業資格と職業能力開発の技術を研究しています。もともと、別分野の研究のつもりでしたが、近年は職業資格の日本的な特徴が、日本での職業能力開発の技術の適用状況を曖昧にしているという考えに至っています。

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